16歳のSimonは家族にも友達にも言えない秘密があります。そのことを唯一話せるのは、偶然SNSで知り合った同じ学校のBlue。メールを通して、顔も本名もしらないBlueと悩みを共有し、冗談を言い合うことで、寂しさや誰にも言えなかった秘密との折り合いをつけています。ところが、Blueとのメール内容を学校の同級生Martinに読まれてしまったことで、Simonが大事にしていた世界が少しずつ変わってしまいます。
Simonの秘密、それは自分がゲイであること。Martinにこのことをばらされてしまったら、家族や友達の反応も気になるし、せっかく仲良くなったBlueにも迷惑がかかったり、Blueが怯えてメールをしてくれなくなったりする可能性もあります。SimonはMartinからのメールの内容をばらされたくなかったら…という脅しに逆らえず、自分の友達のAbbyとMartinが仲良くなるような手助けをします。このことが、Simonの友達や幼馴染の微妙に保っていた均衡をくずしていきます。
Simonの目を通して綴られるSimonとBlueの関係、Simonの学校生活、友達、家族、どれも16歳ですよねー、悩みますよねー、こんなことありますよねー、とSimonを身近に感じました。
Simonの気持ちに寄り添って物語を読んでいたので、Blueが一体誰なのか、周囲の誰もがBlueなのかもしれないと観察し始め、Blueの一言一言にS一喜一憂し、Blueの用心深くなかなかヒントをくれないことにイライラし、そして、Blueが誰かわかったときには、もう一度初めから読んで、BlueがBlueだっかヒントが散らばっていないか確認しました。
著者は以前clinical psychologist(臨床心理士)として、特に子どもと10代の人たちの“こころ”の問題にに取り組んでいたそうです。心の専門家として子どもたちや家族の悩みに接していたことがこのお話に臨場感を持たせているのかもしれません。例えば、Simonが不本意なタイミングで,自分がゲイであることを家族や友達に伝えた時、その時のSimonの気持ちや家族・友達の反応、同級生のからかい、そして学校の対応などは、実際に著者が接したことのある相談や経験を参考にしているのでしょう。
私はカミングアウトの経験がなく、この点についてのSimonの心の格闘を想像し共感するしかできません。後、online上でしりあい、実際に会う前に好きになるという経験もないので、この点についてBlueが誰かわかって顔を見ながら話したときに差異や違和感を感じたりしないのがとても気になりました。でも、これらはSimonとBlueが上手くいって、孤独を感じていたSimonとBlueに彼氏ができるという楽しい気分を味わってもらいたいという私の勝手なおせっかいで、16歳の男の子にかなり感情移入してしまいました。
Simon vs. the Homo Sapiens Agenda
By Becky Albertalli